退職金どうしよう?
退職金制度は社員としては、あると嬉しい制度でしょうが、会社側から見ると法的義務もない恩恵的制度です。
実際に顧問の社労士に
「うちくらいの規模の会社(年商4億程度)は実際どうしているの?」
と聞いてみたところ、
A:企業ごとです。儲かってない中小企業はやってない。ただ、儲かっている中小企業は401kをやっている所が増えて来ている。大企業だと4割が401kをやっている。
とのことでした。
退職金のそもそも論について
退職金はそもそも昭和の制度で、終身雇用制が大前提で中小、大企業に関わらずどの会社もやってた時期の制度です。
会社も終身雇用を前提としていたので、「定年まで働いたらこれだけあげますよ」というスタイルでした。
現在は一つの会社で40年ずっと骨を埋めて働くという事もなく、人材が流動的で会社の財務状況次第で大企業でもリストラ、倒産が珍しくない時代になってきています。(※アメリカや他国を見てみると、終身雇用がなかったり、定年制度もない国もあります。また、アメリカについては即日でクビになって退職金もない状態)
退職金制度について
- 労基法上は退職金制度は義務ではない
- そのため、中小企業などでは退職金制度をそもそも作ってない(我々の就業規則にも退職金制度は設置していない)
- 退職金の有無は会社で自由に決めれる(やってもよいし、やらなくても良い)
- ただし、一度「退職金を会社としてやるぞ!」となった場合には、退職金規程というものをきちんと設置しなければいけない
- また、性格上、一度「退職金規程を定めて退職金制度を作るぞ!」となった場合に、例えば5年後に「やっぱり、きついので退職金制度を止めます。」というのは厳しい(社員が「そんなの嫌だ!」と強く反対するため)
中退共(中小企業退職金共済事業本部)とは?
もし退職金制度を導入する場合には「中退共(中小企業退職金共済事業本部)」になります。
これは国(独立行政法人)が運営している制度です。
一企業が「退職金で積み立てやりますよ」と言っても、従業員としては「もし倒産した場合にはその退職金もパァになるから嫌だ!」となります。
しかし、中退共であれば国がやっているので、「会社が万が一倒産した場合でも国がお金を預かっていて退職金を確実に貰える」という安心感が従業員にはあるでしょう。
もし企業が独自で退職金制度を運用する場合には、月額5000円の積み立てであれば、4年で48ヶ月。24万円を払う形でも構いません。
しかしながら払う原資は当然内部留保金ですので、利益を出し、きちんと貯めておければ良いけれども、企業としては支払うときに結構ダメージが大きいです。
ちなみに、失われた10年の時には企業がガンガン倒産したので貰えなかった人も多かったようです。(一企業の退職金制度だと会社が倒産したらお終い。)
中退共の1ヶ月の掛け金は5000円、6000円、7000円という感じで最大月30,000円まで設定でき、退職したらその掛け金が貰える仕組みです。
例)基本は5000円がほとんどで、3年以上は10000円、部長以上は20000円などという形で掛け金を支払う形が多い。
この掛け金は100%企業が負担する(従業員に負担はさせれない)もので、会社の福利厚生費で落とせるため経費算入できます。
退職金を貰うためには、従業員が退職をして、この中退共に「退職したのでお金払って!」と申請をしたら、中退共からお金を貰えますが、納付が1年未満(12ヶ月未満)の場合には、退職金は貰えません。また、1年以上2年未満だと納付した金額より下回ることになります。
3年7ヶ月以降が納付した金額より上回った金額を貰えます。
中退共の退職金は、従業員に代わって事業主が貰う事はできません。
また、中退共の退職金は、どんな形の退職であれ従業員はお金を貰えます。
例えば、まともに働かない従業員や不祥事を起こして懲戒免職した場合でも、その従業員は退職金を中退共から貰えるのです。(会社から中退共に「そんなやつには退職金払わないで!」と申し出ることができるのですが、申し出を受け入れるかどうかは中退共次第です。また、中退共が「じゃあ、支払いません」となった場合でも、そのお金は中退共(国)に入るため、企業は一度払ったお金は二度と戻る事はない=一度支払ったらそれは国のお金になってしまうので注意です。)
中退共の補助として、未加入の企業が入った場合には最初の4ヶ月から1年間は国が半分補助してくれます。初めて入る会社に対しての助成(例えば、5000円で10名入った場合には、月25000円、1年30万補助してくれる)があるのです。
一般的に中小企業で退職金制度を設置する場合には、退職金規約には「中退共に準ずる」と記載し、各従業員は、中退共のウェブサイトで自分の掛け金(5000円であれば5000円)で計算して見て行く形になります。
401kの概要と背景
大企業は4割やっていて、中小企業でも東京などでは加入が増えているのが401kです。
退職金(中退共)と一番違うのは、中退共は退職金(退職した時に貰える)であり、401kは確定拠出年金なので年金(60歳になった時に貰える)であるということです。
401kは現在国でも必死に加入を推し進めてますが、理由としては…
- 厚生年金は世代間扶助なので、もう制度的にガタが来ているというのを国が知ってる。
- 団塊世代の時はおじいさん、おばあさんの年金受給者(1人)を労働者(8人)で支えていた。
- 今はおじいさん、おばあさんの年金受給者(1人)を労働者(4人)で支えている(つまり、昔に比べて今は保険料を倍支払っているので高い!)
- 団塊ジュニアは今後2.5人を1人で支える形(現実的に無理なので、保険料がさらに高くなる&貰える額が減るという事で対応予定)
といったところです。
もはや今の世の中に合ってない、悪しき年金制度(以前はみんなで支え合っていたが、今は支え合えない!)ですし、国としても、年金制度は「もうダメ…」と内心分かっているようなので、より現実的な401kを推進している(国も「自分達の事は自分達でやってね」というスタンス)というのが本音です。
401kの利用について
- 401kも国や金融機関が管理しているものになるので、会社の倒産有無で支給の有無は変わらない。
- 401kは年金なので「退職時に貰える」というわけではない。
- 401kは利用するかどうかは自由に決めれる(強制ではない)。
- もし利用する場合には、制度導入時に10万円がかかる(初期費用)。
- また口座開設時には1人あたり3000円掛かる。
- また利用する時には月額費用1万円と1名あたり月400円の口座管理費が掛かる。
- 401kを会社で導入する際には、社会保険に入っている会社じゃないとダメ(社会保険を払ってない会社は導入できない)。
- 401kを会社で導入した場合でも、実際に401kをするかどうかは、役員、従業員が完全自由に決めれる(社長だけでもOK、役員だけでもOK、従業員だけでもOK)。
- 401kが貰える年齢は60歳(10年以上加入していれば)なので、厚生年金、基礎年金の65歳よりも早い(401kは60歳から貰えるという所からも国が優遇している)。ちなみに、加入が1年未満だと厚生年金、基礎年金と同じように65歳にならないと貰えません。
401kは従業員が自分が自分のために支払う年金のため、会社が負担するものではありません(中退共は企業が100%負担ですが、401kは社員の給与の中で自分で配分を決めれるものです)。
例)20万の給与であれば、19万5000円を給与にして、5000円を401kにする事もできる
例)20万の給与であれば、20万を給与にして、0円を401kにする事もできる
そして401kをやるかどうかは従業員が各自で判断できる(年金よりもとりあえず日銭が欲しい!という場合には401kの掛け金0円という事ができるので、その分月給を増やす事などもできます)。
401kのメリットとは?
企業が払うわけではないので、401kは経費にはならないのですが、従業員(個人)として、掛け金は全て損金として非課税になリます。
→例)月5000円の掛け金であれば、年間6万を非課税で貯めれる事になる。
非課税枠が増えて、トータルの所得も下がるので、毎月の社会保険料や県民税や市民税、所得税が下がりますし、社員1人あたり毎月の社会保険料も下がれば、半分ずつ負担している企業としてもその人の社会保険料も下がるわけです。
また、401kの年金は、そのお金を貰うときにも非課税で貰えるのが大きいですね。
他にも60歳前に死んでしまった場合には厚生年金、基礎年金は0円→特に59歳で死んでしまったらものすごく損ですが、401kは、死んでしまった時に遺族や子供に非課税で行くので無駄がありません。
また、企業型(企業経由で支払うタイプ)は前からありますが、最近は個人型も始まったので、もし勤めている企業で401kがない場合には、個人で金融機関などで出来ます。
さらに、企業型401kは、「401kをやっている企業に勤めていたけれども、その後、その会社を辞めて転職する」となった場合には、転職先の企業で401kをやっていれば、その金額をそのまま引き継ぐ事が可能です。
その他、401kをやっていれば、求人票に「401kやってます」と記載ができるので、大企業などに勤めている人にとっても魅力的に映り、求人面でも有利に働くといえます。
例)もし転職をする時に「同じような待遇、業界、勤務地」で、「401kあり・なし」だったら、「とりあえず401kありの方に応募してみるか」となるため
401kをやっている企業や人など
やっている人や企業は高所得の人が多いです。
理由としては、年間6万の非課税枠があっても、トータルの年収が少ない人だと税金はそこまで下がらないのですが、401kの月額上限は5.5万円なので、非課税で年間60万貯めれるからです。
→60万の非課税だと市民税、県民税が年間6万安くなるので結構大きい
401kをする時の商品
401kをする時には月額の掛け金を選択できますが、さらに運用商品も選択できます。
具体的には3タイプありますが、「低利率で元本保証型」、「高い利率だけれども元本割れある商品」などがあり、実際日本人に人気なのはほとんど「元本保証型」です。
401kを貰う時(60歳時)に、運用益と一緒に貰えます。
会社としての提案例
従業員負担の401kなので、従業員も「自分の給与を減らしてまで401kやりたくはない」という人が実際はほとんどです。
そこで、企業が「5000円ベースアップします。その際に5000円を給与に乗せる事もできますし、401kもできますよ。どうしますか?」と提案すると、結構401kをやる人が多いのが実情です。
注意点
- 掛け金は0円から5万5000円で選べる。
- しかし、1回でも最低金額の3000円に設定したら、その後は変更ができない(退職しない限り変更できない)。
→ただし、0円には出来ないけれども、55,000円から3000円などの減額はできる。 - 一方、個人型は後から0円にも変更ができるため融通が利く。
→ただし、個人型の月額は最大23,500円(個人型は銀行や信金などで入る)。
尚、401kについては、初期費用と月額費用(1万)が掛かるので、もしやるならば多くの人が入った方が良いでしょう(1人だけ入るのはちょっともったいない)。
退職金と401k
両者は制度的に大きく異なるものなので、実情として「中共退と401k」を併用してやってるという企業はまずないとの事です。(弊社社労士談)
どちらも退職後(老後)の安心を従業員に与えるという意味では同じような立ち位置と言えるので退職金か401kか選ばれると良いと思います。
アイデアとしては、「3年以上勤めている人に対して提案する」(3年未満の人に退職金を出す義理などはないため、3年経ったら選んでねというのが会社としても親切そう)という形をウチはとっています。
退職金と401kのどちらが良いかは業種や業界によっても異なります。
医者、看護師、歯医者さんの業務は大変みたいで、「歯医者には戻りたくない!」という方も少なくありません。
医療業界に限った事ではありませんが、入社、退社も多い業界では雇用主としても「どうせ長くは働いてくれないんだろう」と思っていて、スタッフ(雇用者)としても「何十年も続けて働きたくはないなぁ…」と思っていたりします。
そのため、そのような現場だと「退職金制度があるよ!」と言っても、スタッフとしてあまり魅力的に考えてくれません。
1年未満などで退職した際には退職金が支給されないため、スタッフとしても「たぶん2,3年で退職すると思うから…」ということで魅力が少ないわけです。
従って、そのような現場だと「退職金制度はいらない!掛け金分の月給上げて!」という意見が多く、退職金制度の導入が進まない事も実情としてあります。
何れにしても、長く働いてくれる従業員は会社の資産であり、大事にするべき人(また3年働いた人は4年、5年と長く働いてくれる可能性も高い)です。
業界や現場によって様々な事情はあると思いますが、従業員の日々の生活と将来を守るのは経営者の責任です。
事業経営をやっていると調子が良い時はいくらでも退職金を出してあげたいと思うものですが、長い経営の中では苦しくなる時も必ずあります。
それでも従業員の生活と将来は守るために、準備ができることはしっかりと準備をしておきたいものですね。結果的にその準備と努力が自身の事業経営も助けることに繋がると思います。