合同会社のランニングコスト
合同会社設立のメリットの一つにこの「ランニングコストの安さ」が挙げられます。
設立費用も株式会社に比べ3分の1以下と安いのですが、更には決算公告や役員の重任登記手続き、株主総会の開催が不要な為、ランニングコストが非常に安く済みます。
従って、許認可や取引先との関係で法人化の必要性が高い介護事業や建設業でも広く使われますし、節税目的やレバレッジ目的のFX取引用法人口座開設の為にも合同会社は広く利用されております。
有名どころでは、アップルの日本法人や、西友、シティグループの日本法人も会社運営上のランニングコストの安さや会社運営上の煩雑な手続き回避の為に合同会社の法人形態を取っています。
では、実際合同会社で想定しうるランニングコストはどういったものがあるのでしょうか?
1.年間7万円の法人住民税
これは合同会社に限ったことではないのですが、法人設立をした際のデメリットとして必ず上がってくる項目であり、「赤字でも法人住民税の均等割で7万円かかる」と言うことをご存知の方は多いのではないでしょうか?(この7万円と言うのはあくまでも資本金1,000万円&従業員50人以下の場合の話ではありますが、多くの方はこちらに該当するでしょう。)
実は、会社設立の相談に乗っていても、この年間7万円を非常にネックに感じている方が多いのですが、法人設立をすれば、あらゆる手段で意図的に赤字に持っていくことも出来るわけで(もちろんやり過ぎはいけませんが)、その為のコストが月6,000円弱と考えると、私はメリットの方が遥かに大きいと思います。
もちろん、7万円の法人住民税分の節税を法人化で図れない、或いは7万円の法人住民税すら払える自信、売上の目途が立っていないと言うのならば話は別ですし、そのような状況なら法人化自体必要ありません。
しかし、例えば売上の目途が年間数百万円~1,000万円程度でも立っているならば、法人化を真剣に検討された方が実質的に得をすることが多いと思います。
2.各種変更手続き費用
合同会社設立後に見落としがちなのが「各種変更手続き費用」です。
もちろん何の変更事項もない場合には一切かからない費用ですが、案外設立後には色々な変更が生じるものです。
- 会社名を変えたい
- 本店所在地を移転したい
- 役員をやめたい
- 資本金を増やしたい
- 代表社員を変更したい
- 代表者が引っ越して住所が変わった
上記は全て登記事項になりますので、変更登記の必要があります。変更登記には登録免許税がかかりますし、専門家に依頼すれば専門家への報酬も必要になります。(ご自身で手続きを行うことでできるだけ費用を抑えたい方はこちらのセルフキットをご活用ください)
登録免許税は変更事項次第ですが、1万円〜6万円かかります。
しかも変更の度にかかりますので、例えば2回会社住所を変更すれば、管轄次第では12万円かかるわけです。
これら無駄なランニングコストを生じさせないためには、設立段階で熟考に熟考を重ねた上で会社内部の基本事項や機関設計をすべきと言えるでしょう。
3.税理士費用・社会保険労務士費用
会社設立をしますと(個人事業でもそうですが)、税務申告が必要ですし、人を雇えば社会保険関係の手続きが必要になります。
これらのコストは実際はどの程度かかるものでしょうか?
税理士(社労士)費用は実はそんなに高くはない
従業員数や売上、業種、仕訳数にもよりますので一概には言えませんが、例えば仮にご自身と奥さんの二人だけというごくごく小規模な合同会社を設立した場合、税理士に依頼したとしても、月10,000円の顧問料ではないかと思います。
別途6か月分の顧問料が決算申告料の相場ですから(税理士によって異なりますが)、月10,000円 × 12か月 + 決算60,000円 = 180,000円/年が1年間にかかる費用と想定できます。
これを高いと思うか、安いと思うかは個人の経済的価値観にもよるかと思いますが、月15,000円程度のコストで、日々の会計記帳や帳簿の整備の手間や、税務面の心理的不安を取り除けるとしたら、私は安いものだと思います。
自分でやれば無料だと考える方もいらっしゃいますが、例えば仕訳の入力や領収書貼付の作業で1日30分かかるとしたら、月900分(15時間)かかることになります。1年で180時間は費やすわけですので、時給換算すると、千円です。(年間税理士コスト18万円÷180時間)
最初の売上が少ない期間(例えば年商300万円とかしかない方)であれば、勉強も兼ねてご自身でやっても良いでしょう。しかし年商が500万円~1,000万円くらいの方になりますと、どう考えても時給1,000円は割りに合った仕事ではないです。
現在月額20万円以上の税理士顧問料を支払っている私も、最初は自分で弥生会計のソフトを購入して自分で記帳していましたし、売上が伸びたら月額1万円程度の費用で税理士顧問を開始しました。
そこから事業が伸びて会社売上も4億円規模となりましたが、最初に依頼していた税理士に今もお世話になっており、現在では20万円以上の月額顧問料を喜んで支払っています。
単なる記帳代行や税務申告だけならそこまでの金額は支払いません。しかし、役員報酬の調整、報酬の分散、旅費規定や社宅制度による節税、消費税や源泉徴収税の適正な取扱い、万一の税務調査に備えた準備を含めた総合的観点から考えれば、税理士を顧問につけずに会社経営していくことは非常に怖いことだと言えます。
「最初にお金をかけたくない!」
その想いは新規開業される方皆同じ気持ちです。
けれども、かけるところにはかけないと、余計大損することになり兼ねないですし、法律が絡むことなので損得の問題だけでは済まないこともあります。
税理士の回し者ではありませんが、税理士報酬は最初は安く年間20万円程度から始められますし、事業規模や契約内容によっては、年間10万円位で引き受けてもらえることもあります。実際に皆さんが考えている程のコストはかからないのです。
しかも、税理士報酬は全額損金で落ちますので、仮に年間20万円税理士に支払ったとしても、それ自体が節税になりますので最終的な税金額で4万円程の違いになるでしょう。(つまり、実質的には20万円報酬を支払ったとしても、16万円で依頼したようなものだと言うことです。)
トータルで考えますと・・・・
上記の通り、トータルで考えますと、税理士報酬次第ではありますが、合同会社の年間ランニングコストは大体20万円~35万円程度のライン(法人住民税含めて)と言えるでしょう。(社会保険労務士の顧問を付けると、別途月額1万円の顧問料として、年間12万円程度のコストが乗ってきますが、従業員がいない或いは少数の場合には社労士の顧問はまだあとでも良いでしょう。)
高い!と思われる方は、まだまだ会社設立をする段階にありませんので、個人で続けられても良いでしょう。
税金面や社会保険の面を考慮し、この程度の年間コストならば安い!と思える方は、合同会社設立のステージにあると言えます。